『許認可申請』について考える

行政の許可・認可、行政への届出を必要とする事業はたくさん存在しています。

許可申請、認可、届出が必要なもの

たとえば、

  • 建設業許可
  • 産業廃棄物処理業許可
  • 宅地建物取引業免許
  • 飲食店営業許可
  • 風俗営業許可
    • キャバレー、バー、クラブ等
    • 低照度飲食店(喫茶店等)
    • 区画席飲食店(喫茶店等)
    • マージャン店、パチンコ店等
    • ゲームセンター等
  • 深夜酒類提供飲食店営業届出
  • 酒類販売免許
  • 道路使用許可
  • 道路占用許可
  • 薬局開設許可
  • 古物商許可
  • 一般乗用旅客自動車運送事業許可
    • タクシー事業
    • バス事業
  • 一般貨物自動車運送事業
  • 屋外広告業登録
  • 美容書開設の届出(美容院)
  • 旅館業営業許可
  • 公衆浴場営業許可
  • クリーニング所開設の届出
  • 動物取扱業登録(ペットショップ)
  • 化粧品製造販売業許可
  • 旅行業登録
  • 病院開設許可

といったものがあげられます。

なぜ、必要なのか

「許可」とは

「本当は一般的に禁止されている行為について、その禁止を個別に解除する行為」をいいます。具体的にはお役所から「してもいい」とお墨付きをもらうことです。それぞれの行政庁から「してもいい」と認められてはじめておこなうことができます。

ではなぜ、’本当は’一般的に禁止されているのでしょうか。たとえば飲食店の営業は、不衛生な状態で営業をすれば食中毒を起こしたり、場合によっては生命の危険を及ぼすことがあります。そんな被害を起こさないために、食品衛生法は飲食店を営業するには一定の基準を満たした場合に禁止を解除するという立て付けになっています。

なお、許可なく飲食店の営業をすると刑事罰の対象となります。

「認可」とは

「私人の契約などの法律行為を補充し、その法律上の効力を有効として完成させる行為」をいいます。正直、わかりづらいですね。必要な認可をもらわないまま誰かと契約した場合はその契約は無効になってしまうということを意味しています。

具体的なことをいうと、農地を売買したいときには売買の当事者が農業委員会の認可を受けなければならないのですが、認可をもらわないまました売買契約は無効になってしまうということです(正確には「許可」をいうのですが、ここではわかりやすくするために伝統的な分類にあたる「認可」と表記しています)。

この農地売買についても、無認可売買は刑事罰の対象です。

必要とする「目的」があります

「許可」でも「認可」でも同様に、行為を規制する法律が存在します。なぜ禁止されているかはそれぞれの法律で定められています。

たとえば、運転免許も「許可」を受けるべき行為のひとつです。その根拠は、この条文です。

道路交通法 第84条1項 自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

道路交通法は第1条目的はこんなふうに規定しています。

道路交通法 第1条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

自動車は走る凶器ともいわれます。交通の安全を守ることができる知識と技能をもった人だけが許されるということにしなければ、市民の安全は守られません。「道路における危険を防止」、「交通の安全と円滑を図る」、「道路の交通に起因する障害の防止」のために必要であるといえるのです。

上にあげた許可や認可が必要な行為もこの運転免許と同じように、誰かを守り保護し円滑におこなわれる必要なのだということです。根拠となる法律の(目的)の条文にそれがあらわれています。

共通する『要件』

「許可」については、ほとんどどれにおいても同様にこの3つの要件を満たすことを必要としています。

  • 人的要件
  • 物的要件
  • 資力要件

人的要件

具体例として、飲食物の営業許可ついてみていきます。営業について、こんな条文があります。

第9章 営業
第48条 乳製品、第十二条の規定により内閣総理大臣が定めた添加物その他製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であつて政令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならない。ただし、営業者が自ら食品衛生管理者となつて管理する施設については、この限りでない。

つまり、食品の加工をして販売するような場合は「食品衛生管理者」をおかなければならないということです。専門の人を置く、責任者を置くことで「禁止を解除」するのです。許可を必要とするものの多くは、「管理責任者」を置くことが要件になっています。なお、店舗の規模によっては「防火管理者」の置く必要があります。

なお、欠格要件もあります。

  • 食品衛生条の許可を取り消され、その取り消しの日から2年経過していない
  • 食品衛生法または同法に基づく処分に違反して刑に処され、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない

この2つに当てはまる人は営業許可を受けることができません。

物的要件

いわゆる「施設基準」を満たす必要があります。ここでも飲食物の許可について具体的にみていきます。

食品衛生法施行規則では、

  • 十分な広さがあること
  • 適切な作業区分(区画整理)がされていること
  • 設備構造
  • 機械器具

といったことが定められています。どれも、公衆衛生の維持と食中毒を起こさないための基本的なルールに則った基準です。この基準を満たさなければ、飲食物を取り扱う資格なしとして営業の許可を得ることはできません。

また、一般貨物自動車運送事業や障がい福祉施設などでも同様に、事業所の施設の基準があります。

資力要件

この資力要件については、すべてのものにあるわけではありません。たとえば建設業の許可や廃棄物処理業では満たすべき財産的基礎の要件があります。

もっとも、事業をおこなうばあいは資金繰りがネックになることがほとんどです。運転資金の融資を受けたり、宣伝広告に補助金を利用するなど、事業計画の一環としても資金は準備する必要があります。

許可、認可、届出が不要なもの

他方、許認可が必要ないものの例としては

  • 葬儀屋(霊柩車を使用する場合は必要)
  • 学習塾
  • カイロプラクティック
  • ネイルサロン
  • エステサロン(シャワー取り付け、化粧品や健康食品を販売する場合は必要)
  • 通信販売業(食品・中古品・化粧品を扱う場合は必要)

といったものが挙げられます。そのため、こういった事業をおこなう場合には行政の手続きとして必要と考えられるのは開業届くらいかもしれません。取り扱う内容によっては一部許可が必要になるものもありますので、事業をおこなう前に確認が必要です。

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