自動車登録 困難事例について

「書類のない自動車を購入したが、登録ができずに困っている」というご相談をお受けしたことがあります。そのたびに頭によぎることがあります。

「購入する際に、登録ができないというリスクを承知の上で購入しましたか?」

大抵、販売業者が名義変更手続きをしないままにしていて、さらには書類を紛失していることが多いです。そんな状況のまま記録上の所有者が亡くなられていたり、ご家族が見つからない場合もあります。

そのご家族が見つかったとしても、ご家族に登録手続きに必要な書類の作成や取得にご協力いただかないといけません。もうずっと前に売ったものなのに、今になって巻き込まれたくないと思われるのも致し方ありません。遺産相続の書類も作成する必要が出てきます。

販売した側は「書類がないとわかっていて買ったでしょう」「売ってしまってから自分はもう関係ない」ということを主張してくるでしょうし、それも当然と言えば当然のことです。協力してくれ!と言っても連絡すらつかなくなることがほとんどです。

記録上の所有者の方もしくはそのご家族にご協力いただかねばならないということになります。書類のない自動車は安かったり、もう車体自体が出てこないということで購入してしまう方もいらっしゃるでしょう。

私は、事前に必要な知識のないままに購入してしまうことがどれほど危険か認識していただきたいと考えています。登録されている自動車は、いわば不動産です。一時抹消登録をしていても、一時抹消をした時点での記録されている所有者が現在も所有者ということになります。永久抹消登録をしない限り、記録からいなくなることはありません。

また、基本的には全国で登録の手続きは画一的ではありますが、登録先の管轄の陸運局によって対応に多少の違いがあったりもします。インターネットの情報だけを鵜呑みにせず、実際に管轄の陸運局に電話して聞いてみるべきです。そこで、自分の認識が違っていたことに気づくこともあるからです。

これまで事務所のブログに、「書類のない旧車を買う前に注意したいこと」という記事を載せていましたが、今回こちらに少し記事を書く関係でおろすことにしました。あくまでも行政書士としてできることは、必要な書類のご案内や書類作成、申請代行です。お相手への交渉はできません。

ご相談いただいた際は、「登録できると断言はできません。できないこともあるので、その旨承知しておいてください」と必ずお伝えしています。無責任に「登録できると思います」ということは絶対にできません。みんなが不幸になってしまいます。

書類のない旧車の登録は、四方八方にお願いするかたちになります。陸運局にもお願いすることになるわけですが、「不審案件」扱いとなって時間がかかっても結局登録ができないということも十分あり得ます。

旧車は今ブームで、資産として持たれている方も多くいらっしゃいます。しかし、本当にメンテナンスも含めてコストがかかります。書類のない旧車の購入はいわば博打です。時間とお金と労力のコストが払えること、部品取りになる可能性を理解していること、登録ができずに無駄になるリスクがあることの認識と覚悟がなければ、手を出すべきではないでしょう。

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