行政手続きのデジタル化
6月7日にデジタル庁から「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が発表されました。
インターネットの活用
現在マイナンバーカードを利用した確定申告(e-Tax)が可能になり、税務署に直接作成した書類を提出しに行かなくても済むようになりました。国勢調査や家計調査といった統計にもパソコンやスマホから回答が可能になり、回答の利便性や回答行為のハードルを下げています。
コロナ禍以降、持続化補助金・事業復活支援金の申請や1人10万円の定額給付金受給手続きにマイナンバーカードを利用することで申請と審査をスピード対応するという方法が採用されことも記憶に新しいと思います。
このたびの新型コロナウィルス感染症への対応のため、行政手続きにおける書面・押印・対面の抜本的な見直しがされた結果として99%を超える手続きで押印義務が廃止されました。97%を超える手続きが令和7年末までにオンライン化する方針が示されています。
本人確認のオンライン化
個人のレベルでいえば、マイナンバーカードの公的個人認証機能を活用することで本人確認おこなうことが想定されています。定額給付金の手続きの際、マイナンバーカードを利用したイメージです。
法人や個人事業主向けの行政手続きのデジタル化としてGビズIDの利用があげられます。インターネット利用による申請手続きが可能になっています。また、現在すでに一部の行政手続きがこのGビズIDを使っておこなうことができるようになっています。GビズIDを登録する際は、法人であれば登記事項証明書と代表者の印鑑証明書が必要です。
地方公共団体が行政手続きをオンライン化するために必要な情報システムを統一するため、国は整備をしていくことになっています。たとえば、すでに行政機関が持っている情報について再度提出を求められる添付書類がないように手続きを省略するためのデータ連携などです。
具体的には以下のものがあげられます。
- 法人の登記事項証明書
- 戸籍謄本等
- 住民票の写し
- 印鑑証明
- 所得証明書、納税証明書
- 定款等
- その他書面
システムが整備されるとあちこちに書類を取りに行く必要がなくなるかもしれません。
今後は医療分野、教育分野、防災分野、こども等の準公共分野もデジタル化になるとのことです。マイナンバーカードに保険証の機能をつけるのもその一環といえるでしょう。
これからのデジタル社会にむけて
デジタル庁の発表のなかにこのような一節があります。
デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会
社会全体のデジタル化は、国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データを最大限活用しながら、安全・安心を前提とした「人に優しいデジタル化」であるべきです。
デジタル技術の進展により、一人ひとりの状況に応じたきめ細かいサービスが低コストで提供できるようになり、多様な国民・ユーザーが価値ある体験をすることが可能となってきました。デジタルの活用で目指すのは、これをさらに推進し、誰一人取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会です。
デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
ただ、利便性の向上というメリットと同じくらいにデメリットがあると思われる方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。実際、今回のデジタル庁の発表資料のなかにもセキュリティの問題や個人のプライバシーの問題があげられています。
また、スマートフォンやパソコンをお持ちでない方やインターネット環境が整っていない方ももちろんおられるのが現状です。高齢者の方々や障がいをお持ちの方々でご自身で手続きが難しいといったケースも考えられます。そういった方々へのサポートも今後の課題になってくるでしょう。
実際にどんなものがデジタル化する?
今回発表された内容の多くはいわゆる許認可申請手続きです。一般の方がご自身でされるものについては、たとえば自動車保有関係手続等や遺失物関係手続きがあげられます。自動車保有関係手続きは車検証のICカード化やいわゆるOSS(ワンストップサービス)の推進とセットで進められるのではないでしょうか。
他に国が主体におこなう統計調査もさらにデジタル化が進むと考えられます。ただし、こちらに関しては一度実際に調査対象が存在するかを実際に確認する必要がありますので「回答」や「提出」部分については人が動くことは変わらないのではと考えています。
この先、デジタル化が進んでいったとしても人が介在する手続きは一切なくなるわけではないでしょう。逆にいえば、人が介在しなくても均一に処理できるものはどんどんデジタル化していくかもしれません。この先も困った方々や手助けを必要とするみなさんのサポートができる行政書士として活動していきたいです。