著作権者不明等の場合の裁定制度申請
たとえば他人が作った曲を歌ったり演奏する場合や他人が書いた本をもとにして演劇で実演するような場合には、著作権の保護期間が経過していない限りは原則としてその曲や本を作った人とその隣接者と言われる人の許可をとる必要があります。許可を取らずに無断使用すると、民事上も刑事上も責任を問われてしまうので注意が必要です。
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裁定制度とは?
ところが、その作者(以下、著作者とよびます)が誰かわからないとかどこにいるかわからないこともあります。また、著作者が亡くなっていてそのご家族(相続人)がどこの誰だかわからないうえにどこにいるかわからないといったこともあります。これでは作品使用の許可を得ることができなくなってしまいます。
そこで、著作者の許可を得る代わりに文化庁長官の「裁定」を受けて、通常の使用料額にあたる補償金を供託することで、許可を得たのと同じように適法に利用することができるというのが「裁定制度」です。
裁定申請のための前提知識
誰に対してするの?
文化庁です。
著作権者
原則、「著作物を創作する者」をいいます。例外的に、会社が著作権者になることもあります。また、著作権者が複数人関与する場合もあります(たとえば、多人数がかかわる映画制作など)。裁定申請をおこなうのは、この「著作権者とその隣接者が不明な場合」であることが大前提になります。
「著作物等」について
裁定申請の対象は、「著作物等」です。著作権法では「著作物」とは、「思想・感情を創作的に表現」したものをいいます。具体的には、以下のものが著作物にあたります。
①小説・脚本・講演(漫画は①と④の組み合わせになります)
②音楽
③舞踏・無言劇
④美術
⑤建築
⑥図形
⑦映画(アニメ、ゲーム、動画、CM含む)
⑧写真
⑨プログラム
著作物にあたらないものとしては、特許法や意匠法の対象になるものも含まれます。具体的には以下のものがあげられます。
・ありふれた表現や定型的な表現
・事実やデータ
・アイデア
・タイトル、名称、単純なマーク
・実用品のデザイン
裁定申請の対象となるのは、「著作物」のうち「権利者もしくは権利者の許諾を得た者により公表され、または相当期間にわたり公衆に提供等されている事実が明らかである著作物、レコード、放送及び有線放送」です。なお、「相当期間にわたり公衆に提供等されている事実が明らかである著作物等」とは、相当期間にわたり世間に知れ渡っている著作物等のことをいいます。たとえば、童謡といったものが考えられます。
裁定申請をする前に
裁定制度は、著作権者とその隣接者といった権利者が「どこの誰かがわからない」「どこにいるのかわからない」場合に利用できます。そのため、権利者がわからないことを担保するに足る程度の「相当な努力」をおこなうことが前提になります。ただわからないというだけでは申請しても取り合ってはもらえません。注意が必要です。
申請中は利用できる?
文化庁に裁定申請をおこない、文化庁長官の定める額の担保金を供託すれば、著作者が著作物の利用を絶対にさせないとしていることが明らかな場合でなければ、裁定の決定前でも利用ができます。これを「申請中利用制度」といいます。ただし、裁定を受けられなかった場合や直接権利者と連絡できたりコンタクトを取ることができた場合には、その時点で著作物等の利用を中止しなければなりません。注意が必要です。
この制度を利用することで、最低の決定を待って利用を始めるよりも早く利用を開始することができます。
今回は、著作権と「裁定制度」について簡単に制度の説明をしました。次回、裁定制度を利用する場合のおおまかな手続きの流れとかかる時間などについてご紹介していきます。